【事業者必見】売買契約とは?概要や注意点、定めるべき条項を解説

目次

売買契約とは?

売買契約は、特定の目的物を売買するための契約です。この契約では、売主が目的物の財産権(所有権・知的財産権等)を買主に移転し、代金が支払われます。事業では、一度の取引よりも継続的な売買契約が主流となっています。そのため、企業が長期的に安定した取引を維持するためには、売買契約書の条項の選定が極めて重要です。

会社間の売買契約

会社間の売買契約
皆様、売買契約という言葉を耳にすると、一時的な取引を連想するかもしれません。しかし、ビジネスの現実を見ると、企業間の取引は、一回限りのものよりも、継続的な関係が中心です。

継続的取引のメリット
安定性: 継続的な契約は、供給と需要の両方での安定を保証します。これにより、効率的な生産計画や戦略的な販売を実現できます。
信頼の深化: 長期的な関係は、双方の間の信頼を強化します。これは新しいビジネスの機会を生み出す基盤となります。
経済性: 継続的な取引は、大量購入や長期契約の特典を通じて、コストを効果的に削減する機会があります。

企業間の売買契約における継続的な取引の重要性は、安定供給、深い信頼関係、そしてコストの効率性にあります。これらの利点を活かして、持続的なビジネスの関係を構築することは、現代ビジネスの成功の鍵です。

注意点

上記で解説したように継続的な取引になることが主流です。しかし、取引の都度、「売買契約を締結する旨・目的物の指定」を記載した契約書を1から作成することは効率的ではありません。
そこで、契約を基本契約と個別契約に分割することをオススメします。

基本契約


「売買契約を締結する旨」は全ての取引において共通です。なので「貴社との取引においては包括的に定める」とすることにより、こちらを取引の都度、契約書に記載する必要はなくなります。
主に、目的・履行時の注意点・支払方法及び期日・契約違反時の罰則・紛争時の管轄裁判地を定めます。

個別契約

「目的物の指定」は取引の都度、変更することが多々あります。そのため、こちらは基本契約とは別に個別契約として取引の都度、締結するようにします。
主に、目的物・引渡方法及び期間・検収の内容及び期間を定めます。

売買契約の流れ

売買契約の流れは、上記図に示す通り、①契約締結、②注文、③納品、④検収、⑤支払いの5つのステップで構築されています。一見シンプルに見えるかもしれませんが、各段階での詳細な注意点が存在するため、正確な理解と適切な実行が不可欠です。

契約締結

契約締結は、買主と売主が合意し、法的効力を有する契約を形成する重要なステップです。
このプロセスは、契約内容の詳細な協議から始まり、契約書の準備、そして署名や電子認証の手続きを経て完了します。この一連の手続きを正確に行うことで、当事者間の法的な権利と義務が明確に確立されます。

注文

売買契約が完了した後のステップとして、注文手続きは極めて重要です。
買主は、注文書に商品の詳細、数量、納期などを明確に記載し、売主へ提出します(継続的売買契約でない場合は注文書を介さないケースもあります。)。
売主はこれを受け取り、内容を確認した後、注文書に記載された目的物を納品します。
この一連の流れは、両者間での取引の透明性を保ち、後のトラブルを防ぐための基盤となります。

納品

売買契約における「納品」とは、売主が買主に対して目的物を提供する行為を指します。具体的には、売主が買主からの注文に従い、指定された場所や時期に目的物を届けることを意味します。納品方法には、直接手渡し、輸送、電子データの転送などがあり、目的物の性質に応じて選択されます。納品は契約の履行の一環として重要で、適切に行われない場合は契約違反となる可能性があるため注意が必要です。

検収

売買契約における検収は、目的物が契約通りの品質・数量で提供されたかを確認する重要なプロセスです。納品後に行われるこの手続きは、目的物が契約の条件や仕様に従っているかを検証し、双方の間での誤解やトラブルを防ぐ役割を果たします。検収を円滑に進めるための注意点として、まず、検収の基準は契約時に明確に定義しておく必要があります。また、検収を行う期間や日時を事前に決めて、適切なタイミングで実施することが重要です。検収の結果は文書化して双方で共有・保管し、後のトラブルを避けるための証拠とすることが推奨されます。さらに、不具合が見つかった場合には、その対応方法や期限を明確にすることで、後の問題を防ぐことができます。

支払い

売買契約が締結されると、買主は売主に商品やサービスの代金を支払う義務が生じます。この支払いは、契約で定められた方法(例: 銀行振込、クレジットカード、現金等)と期日に従って行われる必要があります。支払いの条件や期日、方法は契約文書に明記され、双方の合意のもとで決定されます。
遅延や不足などの支払いトラブルを避けるため、契約時には支払いに関する詳細な条件をしっかりと確認し、合意することが重要です。また、支払いが完了した際には、領収書や支払い確認書を受け取ることで、後のトラブルを防ぐことができます。

定めるべき条項

契約締結
相手の信用調査の実施

信用調査とは、相手の財政状況などの内部状況を調査することです。
帝国データバンク、東京商工リサーチ、リスクモンスター等の調査会社に依頼をします。
主に債務超過に陥っていないかを確認し、契約により発生する金銭を支払える能力があるかどうかを判断します。
また、役員の情報を見ることも可能です。役員が頻繁に変更登記されていると内部で揉めているなど状況の推測が可能となりますのでご活用してみてはいかがでしょうか。

押印の確認

契約の成立に押印は必須ではありません。
しかし、契約締結の有無について揉めた場合にとても役に立ちます。

押印済みの契約書について、本当は締結したくなかったため無効にしろ。

あなたがもし、取引先から上記のようなことを言われた場合、どうしますか?
本件については契約当事者の押印がなされていることを証明できれば下記のように対抗することができます。

契約書には、あなた名義の押印がされています。「二段の推定」が働くため客観的に真正に成立した契約書と判断することが可能なので有効です。

このようにトラブル発生時に備えて、当事者名義の押印がなされているかの確認をするべきです。

印紙税額の確認

契約書には原則として印紙税を納付するための収入印紙を添付する必要があります。
売買契約書は原則、印紙税は不要です。
しかし、売買の目的物が不動産・鉱業権・無体財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権・回路配置利用権・育成者権・著作権など)であれば課税文書中の1号文書に該当し、契約金額によりますが、200~60万円の印紙が必要となります。
また、継続的売買における契約期間が3カ月以上であれば7号文書に該当し、4000円の印紙が必要となります。
このように原則と例外がありますので契約内容の再確認をし、印紙税がいくらかを考える必要があります。

注文
注文方法

注文方法(いつ、誰へ、どの方法で等)を条文をして記載する必要があります。

いつ:令和●●年●●月●●日又は注文者が●●したとき等
誰へ:受託者に注文するのか、それとも受注代理人に注文する等
どの方法で:注文書等の書類を手渡しか、インターネット上か等

条文にて明確に当事者同士で認識を合致させなければ、後々「注文方法が思わぬ方法でなされたため注文がされたことに気が付かなかった」などトラブルが発生する恐れがあります。
条文化し、注文→着手の流れを円滑に行えるよう最大限配慮しましょう。

条文例

第〇条 
本商品の発注方法は、乙が甲へ本商品の数量、引渡期日、引渡場所、その他甲乙協議の上定める事項を記載した注文書を交付し、甲が乙へ注文請書を交付する方法によるものとする。

目的物の内容

目的物(名称、品番等)を条文にして記載する必要があります。

名称:可能な限り何が目的物か特定できる名称
品番:表示されている品番と同様の品番を記載

条文にて明確に当事者同士で認識を合致させなければ、後々「目的物が事前に聞かされていたことと違う」などトラブルが発生する恐れがあります。
条文化し、着手→履行の流れを円滑に行えるよう最大限配慮しましょう。

条文例

第〇条(目的物の特定)

甲は乙へ下記に定めるを目的物を引渡し、乙はこれを受領する。

・〇〇
・〇〇
・〇〇

納品
納品方法

納品方法(いつ、誰へ、どの方法で等)を条文をして記載する必要があります。

いつ:令和●●年●●月●●日又は注文者が●●したとき等
誰へ:注文者に納品するのか、それとも受領代理人に納品する等
どの方法で:手渡しか、輸送か、インターネット上か等

条文にて明確に当事者同士で認識を合致させなければ、後々「納品方法が思わぬ方法であったため納品できなかった」などトラブルが発生する恐れがあります。
条文化し、履行→納品の流れを円滑に行えるよう最大限配慮しましょう。

契約不適合責任(民法562~564条)

契約不適合責任とは、納品物が種類、数量、品質などの面で契約に適合していない場合に、受託者へ責任を課す制度です。
条文にて明確に当事者同士で認識を合致させなければ、後々契約不適合責任が不相当に大きすぎるなどトラブルが発生する恐れがあります。
条文化し、不適合発生→責任追及の流れを円滑に行えるよう最大限配慮しましょう。

契約不適合責任については下記で詳しく解説しております。

条文例

第〇条
乙は成果物の受領から6カ月以内に取引上通常期待される精度を欠く不適合を発見し、甲へ通知した場合、乙は甲の故意又は過失の有無を問わず履行の追完(代替品の納入及び不良品の回収を含む)及び代金の減額を請求することができる。

前項に定める契約不適合により乙に損害が生じたときは、乙は甲に対し、〇〇円を上限とする損害賠償を請求することができる。

検収
検収方法

検収方法(いつ開始、いつ報告等)を条文をして記載する必要があります。

いつ開始:令和●●年●●月●●日又は注文者が●●したとき等
いつ報告:令和●●年●●月●●日又は検収開始日から●●日後

条文にて明確に当事者同士で認識を合致させなければ、後々「いつ検収方法が完了したか分からなかったため不安だ」など苦情を言われる恐れがあります。
条文化し、納品物受領→検収結果通知の流れを円滑に行えるよう最大限配慮しましょう。

条文例

1.乙が甲へ、本物品を引き渡した場合、甲は本物品の種類・数量・品質等について受領後●●日以内に検収を完了させ、その結果を乙へ通知する。なお、甲による受領後1週間以内に結果の通知がない場合は検収に合格したとみなす。
2.乙による甲の署名入り受領書をもって、委託業務は完了とする。

支払い
支払方法

支払方法(いつ、誰へ、どの方法で等)を条文をして記載する必要があります。

いつ:令和●●年●●月●●日~令和●●年●●月●●日又は請求書到達後●●日以内等
誰へ:手渡しの場合は指定の人物、銀行振込の場合は口座番号等必要な情報
どの方法で:銀行振込・手渡し・代替物等指定があればその旨

条文にて明確に当事者同士で認識を合致させなければ、後々「支払方法が思わぬ方法であったため支払いができなかった」などトラブルが発生する恐れがあります。
条文化し、履行→納品の流れを円滑に行えるよう最大限配慮しましょう。

条文例

第〇条
1.甲は乙へ、本業務の対価として月額●●円を支払う。なお、委託料金には、本業務の遂行に必要な一切の費用を含む。
2.乙は甲に対し、●●締めにて当月分の委託料の請求書等を作成し、翌月●日までに甲に提出するに提出する。
3.甲は、当月の請求書の金額を翌月末日までに乙が指定する銀行預金口座に振り込む方法により支払う。ただし、支払日が金融機関の休業日と重複している場合は、翌営業日に支払うこととする。
4.委託料の額又は支払方法の変更を必要とする事由が生じた場合は、甲乙協議の上で改定することができる。
5.甲は当月分の委託料金を翌月●日までに乙の指定する下記金融機関口座への振込にて支払う。なお、振込手数料は●(甲or乙)の負担とする。

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