民泊とは
概要
「民泊」とは、住宅の使用収益権を有する所有者本人又は所有者から賃借している人物が、当該住宅を他人へ、宿泊用住宅として一時的に宿泊させることをいいます。
新しい宿泊の形態として注目されています。
民泊の進化
時代の変化とともに、民泊の形態も進化してきました。旅行者を自宅に招く機会は減少し、都市部の住民が農家や漁村での生活を体験する「農家民宿」のような形態が登場しました。
そして、2008年頃からは、オンラインプラットフォームが現れ、外国人観光客に対して個人の住宅や投資用のマンションを貸し出す新しいビジネスモデルが生まれました。
現代の民泊ビジネス
現在、「民泊」は、インターネットを通じて個人の住宅や投資用物件を貸し出すビジネスモデルとして認識されています。
この記事では、この革新的なビジネスモデルである「民泊」について、詳細に解説します。
民泊の仕組み
民泊の基本的な流れは上記のとおり、「①民泊事業者が、宿泊希望者に対して施設を提供②宿泊者は対価として宿泊料を支払う」というものになります。
しかし、宿泊者を多く募集している事業者や従業員が少ない事業者は、お客様へ満足のいく対応をすることが困難な場面に遭う機会もあります。
そのため、対策として上記事業者は、宿泊希望者の方との契約に関する事務や宿泊者対応を外部の業者へ委託するという方も多くいらっしゃいます。
ただ、民泊とは宿泊者が事業者を信頼することによって成立する制度です。そのため、外部委託する際には当然、制限が設けられていますので、既に民泊事業を開始している方やこれから民泊を始めようという方はよく解説を読んで頂きたく思います。
民泊の規定法とは
民泊については、下記の法律・政令・規則により定められています。
届出~宿泊までの流れ
民泊事業を開始するには、届出・事前準備をすることが不可欠です。
また、開業後にも法律で義務付けられていることが多々ありますので下記にて解説しております。
届出
届出書類
下記リンク先から届出書類をダウンロードすることができます。
届出先
原則:都道府県知事
例外:保険所を設置する市又は特別区であり、保健所又は特別区の長が当該届出に係る業務を処理する際は、当該保健所又は特別区の長
届出書への記載事項
住宅宿泊事業を営む「住居ごと」に下記を記載した届出書を作成する必要があります。
届出事項(届出書) | |
---|---|
1 | 商号、名称又は氏名、住所 |
2 | 【法人】役員の氏名 |
3 | 【未成年】法定代理人の氏名、住所 (法定代理人が法人の場合は、商号又は名称、住所、役員の氏名) |
4 | 住宅の所在地 |
5 | 営業所又は事務所を設ける場合は、その名称、所在地 |
6 | 委託をする場合は、住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容 |
7 | 【個人】生年月日、性別 |
8 | 【法人】役員の生年月日、性別 |
9 | 未成年の場合は、法定代理人の生年月日、性別 (法定代理人が法人の場合は、役員の生年月日、性別) |
10 | 【法人】法人番号 |
11 | 住宅宿泊管理業者の場合は、登録年月日、登録番号 |
12 | 連絡先 |
13 | 住宅の不動産番号 |
14 | 住宅宿泊事業法施行規則第2条に掲げる家屋の別 |
15 | 一戸建ての住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎の別 |
16 | 住宅の規模 |
17 | 住宅に人を宿泊させる間不在とならない場合は、その旨 |
18 | 賃借人の場合は、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨 |
19 | 転借人の場合は、賃貸人と転貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨 |
20 | 区分所有の建物の場合、管理規約に禁止する旨の定めがないこと 管理規約に住宅宿泊事業について定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がない旨 |
添付書類
添付書類 | ||
---|---|---|
法人 | 1 | 定款又は寄付行為 |
2 | 登記事項証明書 | |
3 | 役員が、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書 | |
4 | 住宅の登記事項証明書 | |
5 | 住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類 | |
6 | 「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類 | |
7 | 住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積) | |
8 | 賃借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類 | |
9 | 転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類 | |
10 | 区分所有の建物の場合、規約の写し | |
11 | 規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類 | |
12 | 委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し | |
13 | 欠格事由に該当しないことを誓約する書面 | |
個人 | 1 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書 |
2 | 未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書 | |
3 | 欠格事由に該当しないことを誓約する書面 | |
4 | 住宅の登記事項証明書 | |
5 | 住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類 | |
6 | 「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類 | |
7 | 住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積) | |
8 | 賃借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類 | |
9 | 転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類 | |
10 | 区分所有の建物の場合、規約の写し | |
11 | 規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類 | |
12 | 委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し |
欠格事由
次の各号のいずれかに該当する者は、届出をしたとしても、住宅宿泊事業を営んではなりません。
- 精神の機能障害により住宅宿泊事業を的確に遂行するにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 第16条第2項の規定により住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年を経過しない者
(当該命令をされた者が法人である場合にあっては、当該命令の日前3十日以内に当該法人の役員であった者で当該命令の日から3年を経過しないものを含む。) - 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第7十7号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
- 営業に関し成年者と同1の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合にあっては、その役員を含む。第2十5条第1項第7号及び第4十9条第1項第7号において同じ。)が前各号のいずれかに該当するもの
- 法人であって、その役員のうちに第1号から第5号までのいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
事前準備
民泊事業者は、民泊事業開始前に下記措置を講じなければなりません。
ただし、住宅宿泊管理業務を外部委託した場合は、住宅宿泊事業者は下記措置を講ずる義務を負いません。
衛生確保
- 床面積の確保
- 居室の床面積は、宿泊者一人当たり3.3平方メートル以上確保する。
- 床面積の算定は、宿泊者が占有する部分のみを含む。
- 清掃と換気
- 定期的に清掃と換気を行う。
- 設備や備品は常に清潔に保つ。
- 除湿
- ダニやカビの発生を防ぐために除湿を心がける。
- 寝具の管理
- 宿泊者が入れ替わるごとに、寝具のシーツ、カバー等を洗濯し、取り替える。
- 感染症の対策
- 感染症の疑いがある場合は、保健所に通報し、指示に従って消毒・廃棄等の措置を講じる。
- 公衆衛生上の問題が発生した場合も、保健所に通報する。
- 衛生管理の知識
- 衛生管理に関する基本的な知識を身につけるために、講習会を受講する。
- 循環式浴槽や加湿器の管理
- 宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の湯を抜き、加湿器の水を交換し、定期的に洗浄する。
- レジオネラ症を予防するための適切なメンテナンスを行う。
非常時の安全確保措置
住宅宿泊事業者は、宿泊者の安全確保を目的として、届出住宅において、次の措置の実施が必要とされます。
- 非常用照明器具の設置: 緊急時において、適切な視認性を保つために必要です。
- 避難経路の明示: 安全かつ迅速な避難を可能にするため、避難経路は明確に表示されるべきです。
- 火災やその他の災害発生時の安全措置: 火災やその他の災害が発生した際に、宿泊者の安全を確保するための適切な措置を講じる必要があります。
外国人宿泊者が快適に過ごせるようにするための措置
住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者の快適性と利便性を向上させるため、次の措置を講じるべきです。
- 外国語による設備使用案内: 届出住宅の設備の使用方法について、外国語を用いて詳細に案内します。
- 外国語による交通情報提供: 移動のための各種交通手段に関する情報を、外国語で提供します。
- 外国語による緊急連絡先案内: 火災、地震その他の災害が発生した場合の通報連絡先について、外国語で明確に案内します。
- 快適性及び利便性の確保: 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性を確保するために、その他の必要な措置を適切に実施します。
標識の掲載
届出住宅の形態ごとに、公衆の見やすい場所に、下記様式の標識を掲げる必要があります。
家主居住型 | 第4号様式 |
家主不在型 | 第5号様式 |
住宅宿泊管理業務委託型 | 第6号様式 |
第4号様式
第5号様式
第6号様式
開業
宿泊者名簿の管理
届出住宅や事務所においては、宿泊者名簿の適切な管理と、その記録の3年間の保存が必須となります。なお、宿泊者名簿は必ずしも書面である必要はなく、電子データでの保管でも可です。
この名簿には、宿泊者の下記事項について記載する必要があります。
- 氏名
- 住所
- 職業
- 宿泊日
また、宿泊者が外国人である場合は下記事項についても記載が必要です。
- 国籍
- 旅券番号
当事務所でテンプレートを作成しておりますので、必要な方はダウンロードすることができます。
民泊管理の外部委託
民泊事業において下記のいずれかに該当する場合は、民泊の管理を外部委託しなければなりません。
原則:
- 届出住宅の居室の数が5部屋を超える場合
- 届出住宅に人を宿泊させる間、不在(日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除く)となる場合。
しかし、以下のいずれかに該当する場合は、外部委託する必要はありません。
例外:
- 住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の建築物もしくは敷地内にあるとき又は隣接しているとき(住宅宿泊事業者が当該届出住宅から発生する騒音その他の事象による生活環境の悪化を認識することができないことが明らかであるときを除く)
- 届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行う部屋の数の合計が5以下であるとき
- 住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者である場合において、当該住宅宿泊事業者が自ら当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を行うとき
委託時の注意点
複数の業者への委託の禁止
外部委託をする際は、一の住宅宿泊管理業者に委託しなくてはならず、複数の者に分割して委託することはできません。
委託をする際の流れ、手続等に関してはこちらにまとめております。
逆に、受託したいという方向けにはこちらにて登録手続きを詳しくまとめています。
宿泊希望者との宿泊サービス提供契約外部委託時
民泊事業者は、宿泊希望者との宿泊サービス提供契約に係る業務を外部へ委託することができます。
しかし、以下の注意点があります。
委託先の制限
住宅宿泊事業者が、宿泊希望者との宿泊サービス提供契約を外部委託する場合には、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければなりません。
委託時の通知義務
委託する際は、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者へ、①商号②名称又は氏名③届出住宅の所在地④届出番号を通知しなければなりません。
利用者宿泊
お客様が宿泊を開始すると、以下の措置を講じなければなりません。
- 周辺地域への悪影響防止
- 苦情及びお問い合わせ対応
- 都道府県知事への定期報告
周辺地域への悪影響防止
民泊において周辺地域への悪影響を防止するためには、以下のような措置をとることが重要です。
騒音防止
- 深夜や夜間の騒音を制限するための宿泊者へのルール設定。
- 近隣住民への緊急連絡手段の提供。
駐車問題の解決
- 近隣の住民の駐車スペースを不法占拠しないように宿泊者への事前説明。
- 駐車場不足の地域では、宿泊者専用の駐車場の設置。
ゴミ管理
- ゴミの適切な分別と廃棄を確保するためのガイドラインを提供し、ゲストに従わせます。
- 不法投棄やゴミ問題が発生した場合、迅速に対処し、罰則を科すことを検討します。
これらの措置を講じることにより、民泊が地域社会に与える悪影響を最小限に抑え、住民との調和を図ることが必要です。
苦情及び問い合わせの対応
民泊において苦情が生じた際は、迅速かつ適切に対応する必要があります。
まず、事業者は宿泊者からの苦情内容を正確に把握し、誠実に対話を行います。
解決策を共に模索し、合意が見えたら速やかに対処を行います。
重大な問題の場合、関連する機関や専門家と協力し、解決に導くべきです。
また、苦情処理の進行と結果を宿泊者に報告し、納得が得られるよう努めます。
これらの対応により、信頼関係の構築とサービスの質の向上が期待できます。
都道府県知事への定期報告
住宅宿泊事業者は、下記事項について、定期的に、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月における前項各号に掲げる事項を都道府県知事に報告しなければなりません。
- 届出住宅に人を宿泊させた日数
- 宿泊者数
- 延べ宿泊者数
- 国籍別の宿泊者数の内訳
まとめ
これまで、民泊の概要及び届出・事前準備・開業・利用者宿泊の段階ごとの注意点をまとめました。
民泊は、自宅を旅行者に提供する宿泊形態で、新たなビジネスチャンスです。開業する際には、法令順守が重要です。自治体に必要な届出を提出し、許可を取得しましょう。
また、事前準備が鍵となります。まず、客室の整備と清掃を徹底し、清潔で快適な空間を提供しましょう。さらに、競争力のある価格設定を考え、安全対策や防災対策、セキュリティを強化しましょう。
事業開始後も注意が必要です。ゲストとのコミュニケーションはフレンドリーで迅速な対応が大切です。収益を管理し、予約と収益を最適化し、資産価値を最大化しましょう。
民泊は、迅速な成長を遂げている分野であり、収益を上げる機会がありますが、法的義務とゲストの満足度向上に常に注意を払うことが成功の秘訣です。しっかりと計画し、運営することで、民泊ビジネスは成功する可能性が高まります。